記事検索

~ホップ・ステップ・キャリアアップの道しるべ~

query_builder 2024/02/09
メンタル・キャリア カウンセラーの部屋
近年グローバル化やAIの発展などにより、働き方が急激に変化する中で中長期的に「何をしたいか?」を考えることは非常に難しくなってきています。そこで、その人の軸となる「どうありたいか?」を問うキャリア・アンカーが注目を集めています。今回はキャリア・アンカーから、社員の成長と組織の成長について考えていきたいと思います。


キャリア・アンカーの概念の起源
シャインが「キャリア・アンカー」の概念を初めて浮かびあがらせたのは、「いかにして管理職へのキャリアが形成されるのか」、また「いかにして人々は自分を雇用してくれている組織の価値観や物事を行う手順を学習していくのか」について理解を深めるための研究を実施したときでした。 スローン経営大学院(MITビジネススクール)の修士課程の同窓生44人を対象とし、継時的サーベイ(質問表調査)を実施しました。回答者は2年制の経営学修士課程にいる2年目の学生で、卒業後半年たったところで彼ら全員に職場でインタビューをし、1年たった後再び同種のインタビューを行い、卒業してから5年たった後、彼らのキャリアがスタートしてから約10年ないし12年経過した年に質問票調査・インタビューを実施しました。 これらのデータから、彼らの内面的キャリア*がどのように進化してきたのかについて洞察が得られ、実施したインタビューでは年次的に生じた順にキャリアの個人史(キャリア・ヒストリー)を詳しく聞き出すようにしました。キャリア・ヒストリーにおけるひとつひとつの具体的な出来事について、回答者がその選択を行った理由や出来事について感じたことが、驚くほど一貫性のあるパターンを示し、彼ら一人一人の根底にあるテーマは自我の成長感を反映したもので、それは早い時期に学習したことに基づくものでした。彼らは、自分に適していない仕事についたとき、自分にもっと適している何かに「引き戻されている」というイメージのことについて話しており、そこでシャインは、これを錨(いかり、アンカー)にたとえることにしたのです。
*内面的キャリア:それらの経験的事実の内側にあり、仕事に対する動機や意味づけ、満たされた価値観といった、心理的な状態を示す

キャリア・アンカーの種類
シャインは、上記の経時変化の研究と、その後のキャリアのいろいろな段階にいる数百人の人に実施した経歴に関するインタビューをもとに検討したところ、キャリア・アンカーには、次の8つのカテゴリーがあることが明確になってきました。 【➀専門・職能別コンピタンス】【②全般管理コンピタンス】【③自律・独立】【④保障・安全】【⑤起業家的創造性】【⑥奉仕・社会貢献】【⑦純粋な挑戦】【⑧生活様式】 このカテゴリーひとつひとつに対してある程度の関心は誰もが持っているはずです。その中に「どうしてもこれだけはあきらめたくない」と思う際立って重要な領域があり、キャリア・アンカーは、その領域を示すラベルになります。人はその領域への関心をもとに基本となる自己イメージを確定していき、それがキャリアの全段階において最優先課題になっていきます。



キャリア・アンカーの8つのカテゴリー
キャリア・アンカーは、どのカテゴリーに当てはまるかで、キャリア形成の道筋がみえます。それでは、各カテゴリーについて、詳しくみていきましょう。


➀専門・機能別能力(Technical / functional competence)
特定の分野における「専門家」として自身の能力を発揮したいタイプで、特定の仕事に対する高い才能・意欲を持ち、自身の専門性やスキルを高めていくことに価値を見出します。
②全般管理(Managerial competence)
いわゆる「出世志向」が強く「管理職」として自身の能力を発揮したいタイプで、企業経営への関心があり、経営者側に立って物事を考え行動することに価値を見出します。
③自律・独立(Autonomy / independence)
「自分のペースやスタイル」を守りながら仕事を進めたい「研究職」「技術職」タイプで、組織のルールや規律といったものに縛られることなく、自由に行動できる環境の中で自身の力を発揮することに価値を見出します。
④保障・安全(Security / stability)
「保証」や「安全性」を重視して働きたいタイプで、1つの組織で長期的・安定的に、ゆったりとした気持ちで仕事をすることに価値を見出します。
⑤起業家的創造性(Entrepreneurial creativity)
リスクを恐れず、新しい商品・サービスを創り出したい「起業家」タイプで、既存の枠組みにとらわれず、新商品・サービスを開発したり、新規で組織を立ち上げたりするといったことに価値を見出します。
⑥奉仕・社会貢献(Service / dedication to a cause)
社会的に必要とされている「医療」「社会福祉」「教育」などの分野で力を発揮したいタイプで、自分の仕事によって世の中を良くすることに価値を見出します。
⑦純粋な挑戦(Pure challenge)
「難解な課題の解決」や「実力伯仲のライバルとの競争」など、あえて困難な状況に飛び込んで挑戦するタイプで、多くの人が無謀だと思うような厳しい状況下で問題を解決することに価値を見出します。
⑧生活様式(Lifestyle)
「仕事」と、家庭や自分の趣味といった「プライベート」とのベストなバランスを常に考えているタイプで、社会人として「仕事に熱心に取り組むこと」と、一個人として「プライベートの時間を大切にすること」を両立させることに価値を見出します。



キャリア・アンカーの活用
キャリア・アンカーは、インターネットや書籍などにより手軽に診断でき、社員1人ひとりの仕事に対する価値観や希望する働き方を知る手段の1つとして活用することができます。そのため、新人教育、人材育成、人事異動などの場面で活用できます。ただし、シャインの提唱する8つのカテゴリーに「当てはまらない」「自分にしっくりきていない」と感じる社員も中にはいるでしょう。キャリア・アンカーの診断結果だけがすべてではありませんので、8つのカテゴリー以外の価値観を持っている社員もいる可能性がある点を念頭におき、キャリアカウンセリングや研修等を通じて社員1人ひとりを理解し、活用されることが重要です。


◆新人研修・人材教育への活用

キャリア・アンカーは、新人研修や人材育成の研修など、研修の題材としても活用できます。まだキャリアを形成していない新入社員は、キャリア・アンカーの概念を知り、自分のキャリア・アンカーはどのカテゴリーなのかを知ることで、自分自身の譲れない価値観を認識し、これからのキャリアを形成するために役立てられるでしょう。 また、中堅社員に対しては、自分のキャリア・アンカーを再認識し、今までの経験を振り返り、これからのキャリア形成を考えるきっかけにもなります。
◆人員配置や異動への活用

キャリア・アンカーを人員配置や異動に活用することも可能です。例えば、出世志向の強い全般管理タイプであれば、異動を積極的に受け入れ、自己の成長へとつなげるでしょう。一方、専門性を活かしたいと考える専門・機能的能力タイプは、職種が変わる大きな異動はモチベーション低下になる可能性があり、また離職につながる可能性もありますので、注意が必要です。このように、それぞれの社員がどのようなキャリア・アンカーを持っていて、それを加味しながら人員配置や異動を考えることは、社員のモチベーションアップにつながり、また社員の離職も防ぐことができ、社員・組織ともに成長できる環境構築となるのではないでしょうか。


我々がキャリア研修を実施する際には、まず社員ご自身の価値観を再認識していただくことから始めます。そして価値観を大切にしつつ組織に貢献するためには、どのように行動できるか・どうすべきかを考えていただきます。社員の認識している役割と会社の期待している役割のギャップを埋め、より活躍してもらうには、キャリア・アンカーのような「どうありたいか」を考えることは、社員の成長にとっても組織の成長にとっても非常に重要です。 4月には新入社員の入社が控えている会社様も多いのではないでしょうか。新入社員研修と合わせて、個々の価値観の理解を促進させる研修を合わせてみてはいかがですか。 具体的にどのように取り組んでいけばよいかお悩みの場合は、是非弊社コンサルタントにご相談ください。


<出典・参考文献>
木村周(2010)『キャリアコンサルティング 理論と実践』雇用問題研究会
宮城まりこ(2002)『キャリアカウンセリング』駿河台出版社
エドガーシャイン(著)金井壽宏(訳)(2021)『キャリア・アンカー 自分のほんとうの価値観を発見しよう』白桃書房
banso.(2020)「お役立ちコラム:キャリアアンカーとは?」株式会社はたらクリエイト

  • ブレイン・サプライ通信 5月号(5/10配信)

    2024/05/10
    今月のサプライ通信も盛りだくさんです!
  • ブレイン・サプライ通信 4月号(4/10配信)

    2024/04/10
  • ブレイン・サプライ通信 3月号(3/8配信)

    2024/03/08
  • ブレイン・サプライ通信 2月号(2/9配信)

    2024/02/09
  • ~ホップ・ステップ・キャリアアップの道しるべ~

    2024/02/09
    近年グローバル化やAIの発展などにより、働き方が急激に変化する中で中長期的に「何をしたいか?」を考えることは非常に難しくなってきています。そこで、その人の軸となる「どうありたいか?」を...
  • ~心の保健室だより~

    2024/02/09
    メンタルの強さは、さまざまな成功の基礎となるものです。従いまして、「自分もメンタルが強い人になりたい。」という願望をお持ちの方が多いのではないかと思います。 さて、皆さまは、メンタル...
  • ブレイン・サプライ通信 年末年始特大号(12/...

    2023/12/11
  • ~心の保健室だより~

    2023/12/11
    間もなく新年を迎えようとしておりますが、1年の始めには、「今年の目標」を立てられる方も多いことと思います。みなさまは、その目標を達成することがどのくらいの割合で、出来ていらっしゃいま...
  • ブレイン・サプライ通信 11月号(11/10配信)

    2023/11/10
  • ブレイン・サプライ通信 10月号(10/10配信)

    2023/10/10
< 12 3 4 ... 26 >

ARCHIVE