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~ホップ・ステップ・キャリアアップの道しるべ~
キャリアの考え方には、①山登り型 ②川下り型という二つがあるのをご存じでしょうか?
| ●「山登り型」と「川下り型」 |
| ①山登り型 | ②川下り型 |
| 自分が登りたい山とその頂上、つまり明確な目標を決め、そこから逆算していつまでに何をやるというマイルストーンを置き、努力して達成する事でキャリアを形成していく | 「この山に登りたい」という明確なものはなく、川下りの様に川の流れに集中し、その時々の状況に合わせながらキャリアを形成していく |
よく耳にする「キャリアアップ」という言葉は、明確な目標を決めてそこに到達するまでの道しるべを置き、努力する事で一歩一歩近づいていく、つまり山登り型のイメージが強いかと思います。しかし実際は川下り型の様に、目の前の仕事に一生懸命取り組んでいたら、いつのまにか力もキャリアも積みあがっていた、という人の方が多いのが実情です。川下り型は、明確な目標は無いけれど、時には激流にのみ込まれたり障害物に阻まれたりしながらもそれを乗り越えて、気がついたら広い海にたどり着いていた、という方です。 この様な川下り型の社員に、「あなたのやりたい事は?目標は?」と問いかけると、「やりたい事も目標も特にありません。」という答えが返って来ることがあります。その時、「しっかり目標を定めて努力しないとダメじゃないか!」等と叱咤激励のつもりで伝えてしまうと、「大きな目標が無い自分はダメなのではないか?」「明確な目標を追いかけていないと成長できないのではないか?」と不安を増大させることに繋がってしまいます。 とは言え、管理職としては「やりたい事も目標も特にない」という社員をそのままにして良いのかと不安になることかと思います。実際に、川下り型の社員も、ただただ川に流されているだけではキャリア形成に繋がりません。では、その様な社員にどの様なアプローチが出来るでしょうか。
ここで、川下り型の考え方を理論化していると言われる、ジョン・D・クランボルツ(スタンフォード大学 心理学者)が提唱した「計画的偶発性理論」をご紹介したいと思います。「計画的偶発性理論」は、あえて明確な目標(ゴール)を定めず、現在に焦点を当ててキャリアを考える理論です。
| ●計画的偶発性理論<3つの骨子> |
| ➀ | ② | ③ |
| 予期せぬ出来事がキャリアを左右する | 偶然の出来事が起きたとき、行動や努力で新たなキャリアにつながる | 何かが起きるのを待つのではなく、意図的に行動する事でチャンスが増える |
クランボルツは、「キャリア形成の8割は偶然によって決まる」と説いています。そして、目標を明確にして頑張るばかりではなく、「未決定」であることも望ましい状態として歓迎しています。実際にクランボルツが行った調査では、18歳の時点でなりたいと考えていた職業に就いた人の割合は、たったの2%だったと言います。 ただし、この理論は「ただ偶然を待てばよい」と言っているわけではありません。キャリア形成の8割が偶然により決まるのであれば「偶然」との出会いを増やし、そこから生まれるものを前向きに受け止めるように行動する事でキャリアが形成されていく、つまり「偶然を計画的に増やす」ことが重要であり、だからこそ「計画的(・・・)偶発性理論」なのです。
では、計画的に「偶然」との出会いを増やし、それらをキャリア形成に繋げていくためにはどのような行動をすれば良いのでしょうか?クランボルツは、その行動に必要な5つの条件を示しています。
| ●5つの条件 |
| ➀ | 好奇心 | 新しい「偶然」と出会えるように、広くアンテナを張ること |
| ② | 持続性 | 「偶然」と出会ったならば、しっかりとそれに向かい、納得いくまでやってみること |
| ③ | 柔軟性 | 固定概念に縛られず、他人の意見や新たな視点等を受け入れ続けること |
| ④ | 楽観性 | 多少の不安や不満を受け流し、上手くいくと信じること |
| ⑤ | 冒険心 | 失敗を恐れずに新たな領域に踏み出すこと |
川下り型の社員の前に現れる「偶然」は、時に激流や障害物であったりします。具体的には、予期せぬ人事異動で職種が大きく変わる、新規事業のメンバーとなりこれまで経験しなかった業務が加わる、社員が入れ替わり新たなメンバーとチームを組む事となる・・・等、様々な事が考えられます。
そんな「偶然」」との出会いに消極的でいると、「会社に翻弄されている」と感じやすく、「もっと自分に合う環境があるのではないか」と不安や不満を募らせてしまいます。その時に、クランボルツの5つの条件を意識することで、その激流や障害物を乗り越える力をつけ、力をつけた事によって更に強い激流や大きな障害物を乗り越えて、広い海にたどり着く事が出来るのではないでしょうか。自分のやりたい事や目標が明確に定まっていない時期だからこそ、想定し得なかった様々な機会を手にする事ができ、自分自身のキャリアを考える上での良い材料を多く見つけることが出来るのです。
| ●川下り型から山登り型へ |
計画的偶発性理論では明確なゴールを定めないとはいえ、目標を立てること自体が否定されているわけではありません。川下りの途中で出会う偶然や機会を大切にしてスキルを磨き、結果を出していく事で、自分が専門性を高めたいと思う領域や職種に出会えるのではないでしょうか。一生懸命川を下り、広い海にたどり着いた時には、そこに登りたい山(目標)が見えているかもしれません。そこからは、山登り型キャリアのスタートです。
山登り型キャリアをスタートしてからも、なかなか山頂にたどり着けずモチベーションが低下してしまったり、時には「山を下りる」という決断を下さなければならない場面があるかもしれません。その様な場面でも、クランボルツの5つの条件が活かせるのではないでしょうか。
| ●皆様の部下は「川下り型」?「山登り型」? |
ここまでお伝えして来ましたように、キャリアの考え方には二つのタイプがあります。30代前半までの若手社員には川下り型が多いと言われています。また、30代前半以降は山登り型にシフトするのが良い、とする考え方もあります。しかし、変化の激しい現代では、登っていた山から下りて再び川を下る、という事もあるでしょう。皆様の部下は今、どちらのタイプでしょうか?
「やりたい事も目標もない」という部下には、それを不安に思わなくても良いという事、そして「今、目の前のことに集中してやり切ることが、キャリア形成に繋がる」という事をお伝え頂くと良いでしょう。また、ご自身を振り返ってみれば、川下り期も山登り期もご経験されたのではないでしょうか。ご自身の経験をお伝えになることが、部下のモチベーションに繋がる事もあるでしょう。
川下り型の社員に対しては、大きな目標を持つことばかりを重視するのではなく、激流や障害物から逃げずに川を下り、力を付けることが出来る様に導いて行く事で、人材育成と組織の活性化に繋げて頂きたいと思います。また4月には新入社員もご入社され、若手社員と面談をされる機会も増えてくる事と思います。その際には「川下り型」「山登り型」の考え方を思い出して頂き、一人ひとりに適したアプローチをご検討下さい。
| <参考文献・出典>
「新版 キャリアの心理学(第2版)」 渡辺美枝子 ナカニシヤ出版 「マネージャーのための人事評価で最高のチームをつくる方法」 川内正直 株式会社翔泳社 「クランボルツに学ぶ夢のあきらめ方」 海老原嗣生 株式会社星海社 |
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