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~ホップ・ステップ・キャリアアップの道しるべ~

query_builder 2023/02/20
メンタル・キャリア カウンセラーの部屋
アブラハム・マズローの「5段階欲求」をご存じの方は、大勢いらっしゃる事と思います。中には5段階欲求のそれぞれの名称を正確に答える事が出来る方もいらっしゃるでしょう。従業員に対する動機付けの基礎理論として伝統的な経営学で取り上げてきたため、経営学を勉強される中で学んだ方も多いかもしれません。今回は、特にマズローが高次の欲求として示した「自己実現」の概念をご紹介し、従業員様の動機付けやマネジメントのヒントにして頂ければと思います。

生理的欲求
生命維持に関連する最も根源的な欲求です。酸素や食事、飲料、睡眠等が代表的な対象となります。食料が無く極端に飢えている状況では、他の欲求はどこかへ押しやられ何とかして飢えをしのごうとするでしょう。しかし飢えがおさまると新しい欲求、次の高次の欲求が生じます。
➁安全の欲求
飢え等にさらされない身の安全や身分の安定、保護されているという気持ち等を求めるものです。例えば十分に食事をとった幼い子供は生理的欲求が満たされ一旦は満ち足りていますが、両親が所用で不意にいなくなった事に気づくとたちまち泣き出してしまいます。これは安全の欲求が満たされていない状況です。
③ 所属と愛の欲求
生理的欲求と安全の欲求が満たされると、今度は共同体の一員に加わりたいと思うようになります。家族や恋人、友人、職場の同僚、サークル仲間などに目が向く様になり、ただ一員として加えられるだけでなく周囲から愛情を持って迎えられたいとも思うようになります。これが所属と愛の欲求です。
④承認の欲求
共同体の一員となり所属と愛の欲求が満たされると、今度は他者から認められたい、称賛されたい、と地位や名誉を求めたり、自分自身を優れた存在として自認したいという自尊心を満足させる事を求めるようになります。
⑤自己実現の欲求
自分の潜在能力を発揮し、より一層自分あろうとする欲求、ありのままの自分としての可能性を最大限に発揮したいという欲求です。
さて、①から④の欲求については理解しやすいかと思いますが、⑤「自己実現の欲求」についてはいかがでしょうか?「自己実現」という言葉は非常に奥が深く、捉え方もそれぞれではないでしょうか。マズローはその後「自己実現」の研究を進めその概念を示していく事となるのですが、その前段階として先程の5段階欲求を「欠乏欲求」と「成長欲求」に分類してマズローが説明した内容をご紹介します。


◇「欠乏欲求」と「成長欲求」


「欠乏欲求」とは、満たされないもの、欠乏しているものを満たそうとする欲求です。マイナスをゼロにするための欲求というと分かりやすいかもしれません。5段階欲求の①から④がこれに該当します。マズローは、「有機体において本質的に欠けているいわば空ろな穴であり、それは健康のためにみたされねばならず、主体以外の人間によって、外部からみたされねばならない」と述べています。例えば所属と愛の欲求であれば、何らかの共同体の一員となるためには当然他人の存在が必要です。よって欠乏欲求に動機付けされた人の行動については、「基本的に欲求を満たしてくれる者として、また欲求満足の供給源として人びとをみる」ことにより、「自己を意識し、利己的で、自己の満足に動かされる」と述べています。
「成長欲求」とは、欠如しているものを満たすための欲求ではなく、むしろ自分の内側から溢れ出てくる豊かさから生じる欲求の事で、ゼロをプラスに(もしくはプラスを更なるプラスに)するための欲求です。5段階欲求の⑤「自己実現の欲求」だけが該当します。自己実現の欲求とは自分の潜在的な可能性を長期にわたって実現する欲求ですので、その満足は比較的自分自身に帰属しているとしています。よって、「自己実現者においては、依存したり、恩恵を受けたりすることが少なく、自立的」であり、「利害関係をもたず、無欲」な存在と述べています。


◇「自己実現」とは~「成長欲求」を生じさせるもの~
マズローは5段階欲求の中で唯一、「自己実現の欲求」のみを成長欲求と同義としました。その後、調査・研究を行い「成長欲求」を生じさせるものとして、次の項目を発表しました。
「真実」「善」「美」「統合・全体性」「躍動・過程」「独自性」「完全性」「完成・終局」
「正義」「簡潔」「豊かさ」「無為」「遊興性」「自己充足」「有意義」
そして、これらの項目を「存在価値」と呼びました。マズローによる「自己実現の欲求」とは、「存在価値を反映させて生きたいと思う欲求」であり、「自己実現」とは「存在価値に基づいて生き続けること」と言えます。 皆様は、マズローが「存在価値」として挙げた項目についてどの様に感じられるでしょうか。どこか納得する感覚がある方、ピンと来ない方、理想論の様に思われる方、様々かもしれません。 マズローは「自己実現者」とは「存在価値」の追求者であると言っているわけですが、仕事に関して次の様に述べています。
「彼ら(自己実現者)にとっては、たとえば法律の仕事は、正義という目的のための手段であって、目的そのものではない」
「正義」は存在価値の一つとして挙げられていたものです。仕事そのものが目的ではなく、その仕事の背景にある価値を追求する事が「自己実現」に繋がっていく、という事だと思います。私達が自分の仕事を考える上で重要な意味が含まれているのではないでしょうか。 「自己実現の欲求=成長欲求」に基づいた仕事であれば、仕事そのものが楽しく、また能動的かつ積極的な行動による成果が期待できるかもしれません。また、他人や環境に依存しない自立した自己実現者の存在は、組織の活性化にも大きな影響を与えてくれるのではないでしょうか。 逆に衣食住の確保や居場所を求める「欠乏欲求」に基づいた仕事であれば、受け身で消極的な姿勢で行われることが多くなるかもしれません。
言葉では理解する事が出来ても、マズローが唱える「自己実現」は容易な事ではなく、自己実現者はごくわずかだとマズローも述べています。実際には5段階欲求のうち欠乏欲求の段階に属する人がほとんどだという事です。しかしマズローは、欠乏欲求を満たす事を「悪」だと言っているわけではなく、人間を「成長する存在」として捉え、成長過程を5段階欲求で表現し、そのゴールを「自己実現」と位置付けてその特徴を明らかにしたと考えられます。「人間の成長」を考えると、より高次の欲求に推移出来る様に支援する事が大切で、企業(組織)としてはそこまで考えたマネジメントが必要だという事ではないでしょうか。 5段階欲求の①から④については、組織に温かく迎えられる事やコミュニケーションの活性化、働き方改革による職場環境の改善、公正な評価制度等により満たされる部分が大きいかと思います。更に高次の「自己実現の欲求」の段階に入り「自立的」な存在へと成長するためには、キャリアカウンセリング等を通じて自分自身の内面と向き合い自己探求する事も有効かと考えます。
皆様は、マズローの5段階欲求、特に「自己実現」についてどの様に感じられましたでしょうか。皆様の会社の従業員様は、どの段階に位置する方が多いでしょうか。それぞれの段階の従業員様に対し、動機付けやマネジメントに課題はございませんでしょうか。本日ご紹介させて頂いたマズローの理論を一つの参考として頂き、具体的にどの様に取り組んで行けば良いかお悩みの場合は、是非、弊社コンサルタントにご相談下さい。

【出典・参考文献】
新版「動機づける力」~モチベーションの理論と実践~:ダイヤモンド社
マズロー心理学入門:中野明 著 アルテ社
経営学におけるマズローの自己実現概念の再考 (2):三島重顕 著

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